【江戸の園芸で遊ぶ】@名古屋 2026年4月19日開催
今回のテーマは
『春爛漫の江戸 元禄のツツジ』

本講座では、江戸時代から大正期にかけてのツツジ・サツキ文化の展開をたどりました。和本・図譜・錦絵・番付など、多様な資料を通して、ツツジの仲間がどのように人々の暮らしや美意識に根付いてきたのかを紹介いたしました。
(図は『躑躅花図集』)
1. 元禄期のツツジ文化と『錦繍枕』
講座の冒頭では、元禄5年(1692)刊行の『錦繍枕(きんしゅうまくら)』を取り上げました。 本書は、伊藤伊兵衛(三世・きり嶋屋伊兵衛)による園芸書で、ツツジ・サツキの品種を体系的にまとめた最初期の資料として知られています。この『錦繍枕』は、後の園芸書に大きな影響を与え、江戸のツツジ文化の基礎を築いた重要な文献です。
2. 図譜に見る元禄ツツジの多様性
続いて、『躑躅花図集』(江戸中期写本)を紹介いたしました。この図譜は、元禄期に流行したツツジの品種を視覚的に伝える貴重な資料で、当時の園芸文化の成熟を示しています。また、享保18年(1733)刊の『長生花林抄』も取り上げ、江戸中期における品種整理の進展について解説いたしました。
3. 明治〜大正期のツツジ・サツキ図譜
近代に入ると、図譜はより精密で多色刷りとなり、園芸文化の広がりが見られます。
● 明治26年頃『躑躅譜』
全100品種の図譜。上中下3冊で110種
・ 大正期のサツキ図譜
● 1919年『皐月花集』(森田岩松) 60種のサツキ多色図譜
● 1917年『皐月図譜(仮題)』 1面1種28図
これらの資料から、近代における品種の整理と普及の動きが読み取れます。
4. 園芸植物図譜とアザレアの時代
大正期には、横浜植木株式会社による 『園芸植物図譜 Vol.1–7 アザレア』(1913) が刊行されました。アザレア(西洋ツツジ)の導入は、日本のツツジ文化が国際的な園芸潮流と接続していく転換点となりました。
5. 番付・刷物に見るツツジの大衆化
● 江戸末期『源氏名寄躑躅の花道』 染井の里のツツジ順覧並びに品種名刷ものです。詳細
● 1914年『特産久留米躑躅花銘鑑』 ツツジ苗の価格表。通天、高砂、老の目覚ほか
6. 錦絵に描かれたツツジの風景
江戸の園芸文化は、浮世絵にも豊かに描かれました。
● 歌川広重(二代)『東京名所三十六花撰』
「大久保津つじ」「護国寺きりしま」などツツジ名所を描く
● 歌川豊国(三代)『皐月』
開花株の前に美人が立つ図。ホトトギスが飛ぶ
● 東海堂広重(三代)『新撰花鳥尽 黄鳥 つつじ』
関東で最も多く栽培されていた紅キリシマ
これらの錦絵は、ツツジが季節の風物詩として都市景観に深く根付いていたことを示しています。
7. 世界のシャクナゲ文化との接点
『The Rhododendrons of Sikkim-Himalaya』(1849–1851) を取り上げ、ヒマラヤのシャクナゲと欧州園芸界の関係を紹介いたしました。シッキム・ヒマラヤ東部で最近発見されたシャクナゲの植物学的・地理的記録です。フィッチによる手彩色石版画43図版は植物画史の最高峰といわれています。フッカーの探検は、山岳性シャクナゲの世界を欧州にもたらし、19世紀の園芸文化を大きく変えました。江戸のツツジ文化と対比することで、ツツジ類の多様性と世界的広がりを理解する内容となりました。
(事務局 丹羽理恵)
東京名所三十六花撰
錦繍枕
The Rhododendrons of Sikkim-Himalaya
