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みんなの広場Minnanohiroba

幻の多色刷 薬草図讃 『百花図集 草花部』
 坂本純庵(浩然)著 天保六年(1835)


 本書は、紀伊藩医坂本純庵著、次子純雪又は浩然と号した)画、天保六年に五快楼蔵板によって関板された木版手彩色の大変美しい図譜の一つである。

 序は著者純庵の筆になり、漢文で認められているが、後跋は和文で同意のことが表現してあるので初めの部分を紹介しよう。

 「唐ノ陳蔵器力云百州ノ花ヲ探リテ服スレバヨク百病ヲ治シ又長生ス神仙傳云鳳綱(ホウコウ)トイフ人百草ノ花ヲ採リテ精製シ卒病ノモノニ用ユレバ立トコロニ癒ユ余モ又政庚寅(天保十三年)ノ秋創(ハジメ)テ百花ヲ採り製シテ錠トナシ衆病ヲ治スルニ其効神ノ如シ故ニ今茲花ノ奇香アルモノヲ擇ヒ綱目(本草綱目)ニヨリテーニノ主治ヲ述次子純澤ヲシテ画カシメ書肆(出版社)ノ需二應ジシメ梓二上スノミ」(後略)

 こうして本書で紹介されたものは三十六種即ち、黄ギク、白ギク、オニアザミ、ハス、カウシンバラ、アヅキノハナ、カブラ、スイセン、タンポポ、ヨジリアヤメ、ダイコン、クワンサウ、ナヅナ、ハナアフヒ、マツモト(センノウ)、アジマメ、ボタン、ケシ、アマナ、サホヒメ、ヒルカホ、トロロ(トロロアオイ)、アブラギク(ノギク)、ゴマノハナ、ハマナス、ヲキナグサ、ノイバラ、ヲグルマ、クヅノハナ、ラッカセイ、ヤマツツジ、ナス、ハマササゲ、ユリ、ケイトウ、ヒメユリ、以上である。

 面白いのは、長春(コウシンバラ)、蒲公英(タンポポ)、牡丹花(ハツカグサ)、玫瑰花(ハマナス)、山丹花(サンタンカ)など今日ではまったく観賞花そのものであるが、その花々を百種集めることによって優秀な治療薬となるとの説である。

 尚本書は上野益三先生著「日本博物学史」には書名のみ記載あるも詳細記述なく、また岩波書店編「国書総目録」にも見えず、よって「幻の」を副題に冠した。巻末に巻二近刻とあるも未だ見ず。

  ()内著者補

隠居 小笠原左衛門尉亮軒 記   (資料 雑花園文庫蔵)

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