シャクヤクの手描き図書 『花鏡』

折帖に仕立てられ、見開き左方に花の図、右に品種名とそれを題とした和歌一首が優雅な手で書かれている。
内容は和歌集の編集に倣らい春(十六種) 夏(四) 秋(七) 冬(三) 秋(七) 冬(三) 恋(六) 神祇(一) 釈教(二) 雑(七) 賀(一)に分類されている。
たとえば春の部に「転寝」には、「花散し あとにかたしく うたたねは はるのけしきや ゆめにみゆらん」とあり、帯紫紅色一重金しべ咲きの花。
また夏の部に「浪頭」、「山水の いわにさかまく なみがしら なつをよそなる ここちこそすれ」
花は白色一重、翁しべと金しべの仲間種が描かれている。
作画は実にていねいに描かれ、おそらく実物を眼前にし、それなりの画技のある人の手によったものであろう。一方装丁もよく、表紙は金襴装、見開き左右それぞれ金箔の額縁装い、帖の天地左右全て金箔で回され、更に帙は緞子装であり、よほど優雅な暮らしをしていた人の持ち物であったと思われる。
成立年代は、記載品種と他の園芸資料と照合などの研究に待たねばならないが、江戸中期頃上方的な面影がするような気がする。じっくり時間をかけて研究したい。
隠居 小笠原左衛門尉亮軒 記 (資料 雑花園文庫蔵)