柿果実の図譜
『柿品』

本書の原本は、著者成立年代は明らかではないが、前書に「此原本ハ小梅町旧水戸領主徳川家ヨリ借得テ謄写シ農書編纂掛二保存ス」明治十七年一月織田完之記印明治二十年六月謄写三好保弘印とある。
又本文図の説明書きの中に「文化十二乙亥九月四日写ス、天保十三壬寅九月十七日」などの年記が見えるので、幕末の成立本を、明治新政府の農商務省が行った農書調べの中へ加えられた一書を三好保弘(詳細不明)の写本である。
本文記載のカキの品種は、御所百目蜂屋妙丹無名・一無名・二(平核無か)無名・三しも丸無名・四無名・五(盆ガキか)甲州ひらさくみやうたん(佐久妙丹)無名・六七右衛門干カキ無名・七無名・八ひらかき(十夜かき)甲州丸善次(禅寺か)くもて柿(妙法かき)トキン無名・九画かき丸とやま無名・十無名・十一無名・十二俣柿以上二十九品が画かれている。
図右はカキの開花時の枝姿が写され、続いて果実の図又は着果枝共に図されているものもある。
図左の左頁の説明文次の通り
御所
本草綱目啓蒙云品類多シ和産二百徐種アリ集解二載スル所ハ少シ蘇頌之説ノ紅柿ハゴショガキ一名コネリガキ、)大和カキ元来和州五所卜云地ガキトモ大和カキトモ云今ハ地名ヲ改テ五瀬卜云其柿形扁ク大二シテ四ツ二筋アリテ四角二見ユ蒂モ四角ナリ故二一名方柿(中略)万蒂柿(汝南圃史)卜云此柿核少シ上品トス。
江戸末期、まだ富有ガキの成立以前は、この御所ガキが最も上質のカキと称せられていたようである。
隠居 小笠原左衛門尉亮軒 記 (資料 雑花園文庫蔵)