【2027年国際園芸博覧会 開催記念】
『江戸時代から2027年国際園芸博覧会!
日本に根づいた海外の花、海を渡った日本の花(園芸文化の歴史を学ぶ)』
サカタのタネ直売部・園芸文化協会 共催
講師:小笠原誓
2026年10月14日、株式会社サカタのタネ会議室において、株式会社サカタのタネ直売部と公益社団法人園芸文化協会の共催による講演会「江戸時代から2027年国際園芸博覧会へ!『海外に飛び出した日本の花、海外から日本文化に溶け込んだ花』(園芸文化の歴史を学ぶ)」(講師:園芸文化協会 小笠原誓)が開催されました。当日は100名以上のお客様にご来場いただきました。会場の広報展示では、講演で紹介した江戸時代から明治時代にかけての文献資料22点をパネル展示し、参加者の皆様にご覧いただきました。
講演では、日本と海外との間で繰り広げられてきた植物・園芸文化の交流の歴史をたどりながら、2027年国際園芸博覧会へとつながる園芸文化の意義について考察しました。前半では、日本と世界を行き交った植物の歴史を通して、日本の園芸文化がどのように形成され発展してきたのかが紹介されました。まず、奈良・平安時代に中国から伝来し、日本文化の中に深く根づいた梅、菊、朝顔、牡丹を取り上げました。これらの植物は、海外から渡来したものでありながら、日本人の美意識や栽培・育種技術によって独自の発展を遂げ、日本文化の一部として定着した事例として紹介されました。
続いて、日本から海外へ渡り高く評価された植物として、百合、花菖蒲、躑躅、紅葉、椿、紫陽花などについて解説がありました。幕末から明治時代にかけて欧米へ輸出されたこれらの植物は、海外の園芸界に大きな影響を与え、現在でも世界各地の庭園や植物園で親しまれています。特に、日本で育まれた多様な品種や栽培技術は、海外における育種や園芸文化の発展にも大きく貢献しました。
さらに、近代以降に日本へ導入され広く普及した植物として、カーネーション、ゼラニウム、ペチュニア、ダリア、バラなどが紹介されました。これらの花々は、今日では花壇や庭園、家庭園芸に欠かせない存在となっており、海外原産の植物が日本の生活文化の中に自然に溶け込み、新たな園芸文化を形成してきたことが示されました。
講演の最後には、ロバート・フォーチュンの著書『江戸と北京』の一節が紹介されました。フォーチュンは、日本人の国民性の大きな特色として、階級を問わず花を愛することを挙げています。庶民であっても日常的に植物を育て、その成長を楽しみ、園芸を生活文化として享受している姿に深い感銘を受けたと記しています。
「日本の庶民は皆、生まれながらの花好きである」という言葉は、江戸時代の園芸文化の豊かさと、日本人と植物との深い関わりを象徴するものとして印象的でした。江戸時代は、園芸文化が武家や公家など限られた階層のものではなく、都市から地方へ、さらに幅広い人々へと広がった、日本園芸史上画期的な時代であったといえるでしょう。
今回の講演を通じて、園芸は単に植物を栽培・鑑賞するための技術や趣味ではなく、人々の暮らしや文化、さらには国際交流を支える重要な文化活動であることを改めて認識する機会となりました。特に日本の園芸文化は、植物を育てる営みにとどまらず、和歌や俳句、川柳、小説などの文学、さらには絵画や浮世絵などの美術とも有機的に結びつきながら発展してきました。植物が人々の日常生活の中に深く根づき、多様な文化表現の題材や創造の源泉となったことは、世界的に見ても特色ある事例であり、日本文化の大きな魅力の一つであるといえるでしょう。
2027年国際園芸博覧会が、このような日本の豊かな園芸文化を国内外へ発信する貴重な機会となることを期待したいと思います。講演後には、公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会 展示部 松本俊一展示課長より、2027年国際園芸博覧会の概要および園芸文化館について説明がありました。また、NHKエデュケーショナルで国際園芸博の業務を担当している大橋プロデューサーより、「記憶の庭めぐり」の概要と今後の展開について紹介がありました。
(事務局)
