~園芸文化を育んだ花~
「江戸園芸の粋と狂気・変化朝顔
変化朝顔展示会観賞と
三百年の歴史と楽しみ方を学ぶ講座」
実施報告

1. 開催概要
本講座は、2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)を記念して、園芸文化協会、国際花と緑の博覧会記念協会と変化朝顔研究会が合同で開催した特別企画です。江戸時代から続く「変化朝顔文化」を、実物展示と歴史講座の両面から体験していただける内容で、当日は119名の参加者が来場しました。
• 日時:2026年8月29日(土) 9:00〜11:45
• 会場:
観賞:日比谷公園 陳列場(変化朝顔展示会)
講演:日比谷図書文化館 コンベンションホール
• 主催:(公社)園芸文化協会
• 共催:(公財)国際花と緑の博覧会記念協会
• 協力:変化朝顔研究会・(一財)雑花園文庫
• 講師:
伊藤重和(変化朝顔研究会 会長)
小笠原 誓(園芸文化協会)
2. 変化朝顔展示会(9:00〜9:50)
講師:伊藤重和(変化朝顔研究会 会長)
日比谷公園陳列場では、会員が丹精込めて育てた変化朝顔が多数展示されました。江戸時代の園芸文化の象徴ともいえる「出物(でもの)」と呼ばれる奇形花・奇葉の系統が並び、参加者はその多様性に驚嘆していました。伊藤会長から変化朝顔の花や葉の解説が行われました。
参加者からは「本当に朝顔なのか分からないほど多様です」「江戸の園芸文化の奥深さを感じます」といった声が聞かれました。
3. 講演「江戸園芸の粋と狂気・変化朝顔」(10:15〜11:45)
講師:小笠原 誓(園芸文化協会)
●朝顔の開花時刻
冒頭では、NHK『チコちゃんに叱られる』でも紹介された「朝顔が朝に咲く理由」について解説がありました。朝顔は暗期が約10時間続くと開花します。季節による日没時刻の変化と開花時刻の関係を、実例を交えて紹介しました。また開花時刻ごとにさまざまな花を並べて時を知るリンネの花時計も紹介されました。
●奈良〜平安時代の朝顔史料
雑花園文庫所蔵の古典籍(写本)をもとに、朝顔が日本文化にどのように登場したかを紹介しました。
• 『万葉集』:秋の七種の花の一つとして登場するが、現在のアサガオとは別種とする説があります。
• 『本草和名』(918頃):牽牛子=アサガオの最古の記録
• 『延喜式』(927):典薬寮で牽牛子丸五剤が記録
• 『和名類聚抄』:平安中期の辞書に朝顔の記述
• 『源氏物語・朝顔』:恋の儚さを象徴する花として描写
●江戸時代前半の朝顔
江戸初期には百科事典や本草書に朝顔が記録され、園芸植物としての基礎が整います。
• 『訓蒙図彙』(1666):日本最初の図入り百科事典
• 『花壇綱目』(1681):最初の園芸書
• 『花壇地錦抄』(1695):園芸文化の発展を示す名著
• 『朝顔明鑑鈔』(1723):日本最初の朝顔専門書
「此花変態百出にして量なき奇花異品あり」
ここで既に「変化朝顔文化」が尾張名古屋から始まった可能性が示されています。
●文化・文政期(1804〜1830)第1次ブーム
江戸の町で変化朝顔が大流行しました。文化3年、下谷御徒町の「朝顔屋敷」には見物客が押し寄せました。
• 『牽牛品類図考』(1815)
• 『あさかほ叢』(1817)
• 『朝がほ花の図』(1817)
• 『槿花合』(1817):最古級の朝顔花合番付
• 北斎『朝顔に蛙』:変化朝顔を描いた浮世絵
江戸の園芸熱が最高潮に達した時代です。
●嘉永・安政期(1848〜1860)第2次ブーム
成田屋留次郎を中心に、変化朝顔の品種改良がさらに進みました。
• 『三都一朝』(1854)
• 『朝皃三十六花撰』(1854)
• 『朝閑々美』(1861)
• 『牽牛花花合』(1857):番付文化の成熟
• 歌川豊国・芳虎らの錦絵:朝顔が町人文化の象徴に
●明治〜昭和・平成・令和
近代以降も変化朝顔文化は継承され、研究会や愛好会が発展しました。
• 名古屋朝顔会雑誌(1903)
• 片岡潜夫『朝顔図説』(1903)
• 其堂『朝顔 秋豊帖』(1905–1910)
• 東京朝顔研究会会報(1909)
• 国立歴史民俗博物館「伝統の朝顔」展示(2026)
現代でも変化朝顔は園芸文化の象徴として愛され続けています。
最後に「私の不健康な朝顔鑑賞法」として、朝顔の鉢植えを朝涼しい室内に持ち込むと、午後まで花が咲きます。夕方に花が凋落する直前の花が透き通るような美しさを楽しむ「不健康な鑑賞法」も紹介されました。
4. 参加者の声
• 「江戸の人々の情熱がそのまま花に宿っているようでした」
• 「史料と実物を同時に見られる貴重な機会でした」
• 「変化朝顔の奥深さを初めて知りました」
5. まとめ
本講座は、300年にわたる変化朝顔文化の歴史を、実物展示・古典籍・浮世絵・近代資料を通して総合的に学べる内容でした。変化朝顔は単なる園芸植物ではなく、江戸の美意識・遊び心・観察力が結晶した文化遺産であることを改めて感じさせられました。
園芸文化協会が掲げる「園芸文化の継承」の理念を体現する講座として、参加者に深い感銘を与えました。
(事務局 丹羽理恵)
『朝顔三十六花撰』
歌麿 画
『其堂『朝顔 秋豊帖』
