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園芸文化協会の活動Activities

「~園芸文化を育んだ花~ 悠久の時を超えて― 花蓮と蓮文化の魅力」
実施報告

講師:公益社団法人園芸文化協会 小笠原 誓

2026年7月20日、園芸文化協会と神代植物公園の合同開催により講座「~園芸文化を育んだ花~ 悠久の時を超えて― 花蓮と蓮文化の魅力」を開催いたしました。ハス(花蓮)について、植物学・文化史・園芸の観点から幅広くご紹介し、多くの皆さまにご参加いただきました。ご来場の皆さまに心より御礼申し上げます。

観蓮会
 講演に先立ち、神代植物公園で栽培する花蓮園で観蓮会をしました。51品種のコレクションのうち当日は20品種が開花していました。開花初日から4日目の散り際まで蓮の花の形や色の移ろい、また蓮の花の清楚な香りも楽しむことができました。さらに当日は、天気が良く気温が非常に高かったため、蓮の光合成や呼吸活動も盛んで葉の中心部に貯まった露が、葉のガス交換で葉の中からブクブクとでる気泡も見ることができました。公園のハスの栽培担当の方から、育て方や病害虫の管理などの説明もしていただきました。

ハスの開閉と“音なき音”の神秘性
 本講座ではまず、ハスの花が 朝に開き、午前から午後に閉じるという特徴を4日間繰り返すことを解説しました。 わらべ歌「ひらいたひらいた」に登場する“れんげ”がハスを指すことや、古来より人々がその開花を特別視してきた背景にも触れました。 また、「開花時にポンと音がする」という伝承について、機械では花弁の擦れる微細な音が検知されるものの、実際には音はしないことを紹介。早朝に開花する瞬間の静謐な美しさが、ハスが神秘的な花として扱われてきた理由であることをお話ししました。

4日間の開花サイクルと植物学的特徴
 ハスの開花は、 1日目の“とっくり型”から始まり、 2日目の最盛期、 3日目の最大開花、 4日目の散華へと続く、明確なプロセスをたどります。 植物学的には、ハス属(Nelumbo)は 世界に原種が2種のみであること、 ハスとスイレンの違い(花の高さ・葉の撥水性・散り方など)も詳しく解説しました。

大賀ハスと一年の成長サイクル
 1951年に発芽した「大賀ハス」の逸話を紹介し、 ハスの種子が非常に長寿であること、 春の浮葉から夏の開花、秋の枯れ込み、冬の休眠までの 一年の成長サイクルを説明しました。 蓮根が“根”ではなく 茎であること(節がある)も、参加者の皆さまにとって印象的なポイントとなりました。

植え替えの実際(2〜3月)
 園芸としてのハスの楽しみ方として、 2〜3月に行う植え替えの具体的な手順を紹介しました。

蓮文化:仏教・工芸・いけばな・食文化へ広がる魅力
 ハスは観賞だけでなく、 仏教儀礼の「散華」、華葩・華籠、 蓮糸(藕絲)による織物、 食用の蓮根など、幅広い文化を育んできました。 特に蓮糸は 40kgの茎からわずか2gしか採れない希少素材で、當麻寺の伝承にも登場します。 正倉院の蓮華形香炉など、古代から続く蓮文化の広がりも紹介しました。 いけばなでも蓮は江戸時代以前から仏前の供花としても活けられてきました。江戸時代になると立花が盛んにおこなわれ、蓮の立花も立てられた記録が残っています。講師が立てた蓮の立花も紹介し、立花の簡単な解説もあり、蓮の花文化が広く紹介されました。

文学・美術に描かれた蓮
 『阿弥陀経』の蓮華大如車輪 青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光、 『日本書紀』の瑞蓮、 『古事記』『万葉集』の蓮の歌など、古典文学における蓮の象徴性を解説。 北宋の周敦頤「愛蓮説」における「君子の花」という思想や、 江戸時代の松平定信による蓮品種収集と『清香画譜』の紹介や品種の来歴、 春信・広重・豊国・国貞らによる浮世絵の蓮図も紹介し、 蓮が日本文化の中で果たしてきた役割を多角的にお伝えしました。

現代の蓮文化:専修寺の取り組みと象鼻杯
 三重県・専修寺での100鉢以上の蓮管理やオーナー制度、 蓮の葉柄を使って飲む「象鼻杯」など、現代に受け継がれる蓮文化も取り上げました。 NHK『趣味の園芸』でも紹介され、参加者の関心を集めました。また公園の蓮の葉をお借りして、「象鼻杯」の実演をしました。実際はお酒を葉に注いで飲むのですが、今回は「水」で実演しました。

おわりに
 本講座では、 植物としてのハス、文化としての蓮、園芸としての楽しみ方を総合的にご紹介しました。 悠久の時を超えて人々を魅了し続ける蓮の世界を、今後も当協会の活動を通じて発信してまいります。 ご参加くださった皆さまから「蓮の花をたくさん観賞出来た」「蓮にまつわる話が興味深かった」「貴重な資料が見られて嬉しかった」とのご講評が寄せられました。神代植物公園のスタッフの皆様に、改めて深く御礼申し上げます。

(事務局 丹羽理恵)

『清香画譜』

専修寺のハス

『東京滑稽名所不忍の池蓮見』
歌川広重(三代)

 

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