【江戸の園芸で遊ぶ】@名古屋 2026年7月19日開催
今回のテーマは
『江戸の夏の風物詩 涼趣を求めた、江戸人の夏のまなざし』

2026年7月19日、当協会主催による講座「江戸の園芸で遊ぶ ― 江戸の夏の風物詩」を開催いたしました。 本講座では、雑花園文庫に所蔵される江戸〜明治期の植物図譜・本草書・錦絵などを手がかりに、江戸の園芸文化が育んだ美意識と夏の風物詩を読み解きました。多数の皆さまにご参加いただき、心より御礼申し上げます。
江戸の園芸を彩った植物図譜の世界
講座前半では、雑花園文庫が所蔵する貴重な和本を紹介しました。
● 『草木錦葉集』(水野忠暁・関根雲停、1829)
斑入り植物・矮化・異形植物を体系的に記録した大作で、江戸後期の園芸研究の到達点を示す図譜です。斑の表現を白抜きと黒で描き分ける技法が特徴的です。 (「斑入り部分は白抜き、緑を黒で表現している」)
● 『草木奇品家雅見』(青山之住ほか、1827)
草木の奇品を図とともに紹介した図譜で、『草木錦葉集』と並ぶ珍草奇木図譜として知られます。
● 『草木性譜』(舎人重巨ほか、1827)
代表的な草本45種を「天・地・人」の三巻構成で収録。水谷豊文らによる力作の図が並び、引用文献も『本草和名』『大和本草』など当時の古典を幅広く採用しています。
● 『有毒草木図説』(舎人重巨、1827)
日本で初めて有毒植物を体系的にまとめた図説。繊細な線画で毒草122種を記録し、植物形態の正確な描写が高く評価されています。
● 『拾品考』(野田青葭、1850)
幕末に長崎へ輸入された海外植物10種を紹介。パイナップルやタマリンドなど、当時の人々が驚きをもって迎えた舶来植物の姿が鮮やかな多色刷りで描かれています。
● 『植物図彙』(鳥山啓、1892頃)
和歌山出身の博物学者・鳥山啓の書籍4点を紹介しました。『植物図彙』は全種自筆稿本と思われます。他『羊歯図譜』『植物図譜」『植物図集」が出展しました。
西洋植物学の受容と近代への橋渡し
江戸後期〜明治期にかけて、西洋植物学が日本へ導入される過程も紹介しました。
● 『遠西草木略』(宇田川玄随ほか)
ネイラント『オランダ本草書』を底本とした、日本初期の西洋植物学書。漢名・オランダ名・薬効を併記し、江戸の学者が西洋知識をどのように咀嚼したかが分かります。
●『東京大学小石川植物園草木図』
江戸の博物画の伝統が、近代科学図譜へと昇華した貴重な原図集。植物の形態を正確に記録し、学術的価値の高い資料です。「江戸時代の伝統的な博物画や本草図譜の技法が近代的な科学図譜へと昇華した画集です。
●『Icones Filicum』(1831) WILLIAM JACKSON HOOKER,ROBERT KAYE GREVILLE
シダ植物図譜の最高の書のひとつといわれています。分類・形態に関する記述がラテン語で表記、英語で抄訳しています。手彩色図版は、全形のほかに鱗片、胞子嚢群、胞子まで精密に描かれています。WILLIAM JACKSON HOOKERは1841年、キューガーデン初代園長です。
江戸の夏を描いた錦絵の魅力
講座後半では、江戸の人々が楽しんだ「夏の園芸」を錦絵から読み解きました。
● 植木売・金魚売・虫売(五渡亭国貞、1825)
縁日の夜店に並ぶ植木屋・金魚屋・虫屋の風景は、江戸の夏の風物詩そのもの。園芸と娯楽が密接に結びついていたことが分かります。
● 若菜屋五人美女 金魚と石菖鉢植図(喜多川歌麿、1781)
水盤の金魚を眺める涼やかな場面が描かれ、江戸の女性たちが親しんだ夏の園芸文化を伝えています。
● 隅田川七福神之内 寿老人(一勇斎国芳、1853)
背景に百日草が咲く夕涼みの図。百日草の渡来時期を考えると、国芳の植物描写への関心がうかがえます。
● 甲子待根須の賑わい(歌川国明、1861頃)
秋草の咲く庭で涼む美人たちの姿が描かれ、季節の草花を生活の中で楽しむ江戸の美意識が表れています。
●『西洋草花図譜』(谷上廣南 画、1917)
大正時代に日本で生産されていたと思われる西洋草花類の図譜を紹介しました。折帖仕立てですが、あえて広げて展示しました。極彩色木版刷です。
まとめ
本講座では、江戸〜明治期の植物図譜・本草書・錦絵を通して、 江戸の園芸文化が育んだ美意識、夏の風物詩、そして植物を愛でる心を多角的にご紹介しました。
江戸の人々が植物に寄せたまなざしは、現代の園芸文化にも確かに息づいています。 当協会では、今後も歴史資料を通じて園芸文化の魅力を発信してまいります。
ご参加くださった皆さまに、改めて深く御礼申し上げます。 (資料は雑花園文庫蔵)
(事務局 丹羽理恵)
『Icons Filicum』
『西洋草花図譜』
『植木売・金魚売・虫売』の内植木売(五渡亭国貞)
