【緑の講演会】『花開く江戸の園芸文化』を開催しました
主催:公益財団法人名古屋市みどりの協会
後援:名古屋市
協力:公益社団法人園芸文化協会

『尾張名所図会』 旗屋町の門松の図
2026年3月8日、主催・名古屋市みどりの協会主催、協力・公益社団法人園芸文化協会による「花開く江戸の園芸文化」講演会を、今池ガスビル・ダイアモンドルームにて開催しました。本講演は名古屋緑化基金を活用した事業として実施され、募集定員100名を大幅に超える応募が寄せられました。抽選の結果、160名の方にご参加いただき、会場は開演前から大きな期待に包まれました。
講師には、江戸園芸文化研究家で(公社)園芸文化協会・常務理事の小笠原誓が、雑花園文庫に所蔵される貴重な資料をもとに、江戸時代に花開いた園芸文化の多様な広がりについて講演しました。冒頭では、森玉僊『名古屋名所団扇絵集』、岡田啓・野口道直編『尾張名所図絵』、斎藤月岑編『江戸名所図会』など、都市景観と花の名所を描いた錦絵・地誌が紹介され、江戸から尾張に至るまで、花と風景が人々の暮らしに深く根づいていた様子が示されました。『尾張名所図絵』では、江戸時代の名古屋・熱田旗屋町の「門松」を紹介(上図)し、現代の門松との対比もしました。
続いて、吉原の植え桜を題材とした広重・国貞・芳員らの錦絵(「新吉原五丁弥生花盛全図」「北廓月の夜桜」「吉原仲之町」など)が取り上げられ、春の花を楽しむ町人文化の華やかさが語られました。ここでは特に、「吉原の桜はどこから持ってきたのか」という謎解きが行われ、植え桜の品種や植栽の背景、当時の植木商の流通経路など、複数の史料を照合しながら考察が示されました。桜が吉原の象徴として整備されていった過程が明らかにされ、参加者からも大きな関心が寄せられました。
さらに、蔦屋重三郎の出版文化にも焦点が当てられ、『一目千本』『手毎の清水』『抛入華之園』『抛入狂花園』など、生花・投入れの図譜が園芸文化の普及に果たした役割が紹介されました。今回は特別に、蔦屋重三郎の処女出版『一目千本』に登場する110種類の植物と花魁の名前の一覧表を、雑花園文庫所蔵資料にもとづき配布しました。掲載植物を現在の植物名に変換した資料で、当時人気があった植物も想定できることから、参加者からは「貴重な資料を手にできて感激した」との声が多く寄せられました。
後半では、松平定信(白河楽翁)編『浴恩園桜譜』や、広重の「隅田堤花見之図」「御殿山遊興」など、花見文化を象徴する名品が紹介され、江戸の園芸が鑑賞・遊興・出版・品種改良と多方面に発展していたことが示されました。特に『浴恩園桜譜』に用いられた双鉤填墨の技法は、植物図譜の精緻さと当時の文化水準の高さを象徴するものとして注目を集めました。
講演後のアンケートでは、「図版が豊富で理解しやすかった」「江戸の園芸文化が世界的にも独自の発展を遂げていたことを知り驚いた」など、満足度の高い感想が寄せられました。ご参加いただいた皆さまに心より御礼申し上げます。
(事務局 丹羽理恵)

『名古屋名所団扇絵集』

『名所江戸百景上野清水堂不忍池』

『一目千本』
