「緑のない国は亡びる」

「緑のない国は亡びる」――これは1970年、石田博英氏が園芸文化の年頭挨拶で述べた言葉です。高度経済成長のただ中、日本は急激な都市化と産業の発展を遂げる一方で、公害や自然破壊といった深刻な問題に直面していました。氏は、緑のない都市に暮らす人々が自然を求めてかえって自然を傷つけている現状に強い危機感を抱き、心の荒廃を憂えていました。
人間は本来、緑や花にあこがれ、それらに心を託す生き物です。一輪の花、一鉢の盆栽が家庭に潤いを与え、私たちの心を豊かにしてくれます。庭がなくても、時間がなくても、花のある暮らしは誰にでも開かれており、その価値は今も変わりません。それを支えるのが、園芸に関わる人々の存在です。生産者、流通、販売、造園、そして行政や学術の現場が手を取り合い、花と緑に満ちた社会を守り育てていくことが求められています。石田氏の言葉は、私たちに自然と共に生きる意識を取り戻すよう、今も語りかけているのです。
原文 石田博英元会長 (編集 事務局 丹羽理恵)